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鑑賞027「水」(TB 136まで)

パッと見よく意味が分からないけど、だまって見過ごせない歌、
そういう作品が百首に一首くらいあります。
評する言葉を持っていないのに、こういう歌を読むのは大好きなんです。
えへへ。









風化する水槽に咲く赤い花 あんな顔して笑ったんだぜ?
  南葦太

「これにふさわしい上句を考えてみよう!」なんてお題になりそうな、
そんなジョーカー的な匂いのする下句なんですけど、
そこにこの上句を合わせられるのがすごい。

上句と下句の狭間に横たわるこの大きな断絶を、自分の表現を信じて飛べるか。
狭間を埋める作業を読者に委ねられるのか。
たいてい、対岸に渡りやすいように作者が自分で埋めちゃうんですよね。

跳躍できるかどうかは、十分な助走が取れるかにかかっていて、
短歌に向きあう時間こそがその助走にあたるんだと思うのです。
もちろん、成功した一首にするのはとても難しい・・・
だけど、自分で納得がいき、そして一万人に一人でも
「好きだ!」って言ってくれたら、それでいい気がしませんか?

Take a leap of faith! 信じて飛べ!



」の秀歌たち。


夏実麦太朗
 水割りのグラスの汗を拭きながらやっぱりひとりがいいって思う

猫丘ひこ乃
 吾の胸に水琴窟を見つければ君の調べが響く暗がり

氷吹郎女
 虹色のオイルたゆたう水たまり 幼いわたしが手を振っている

梳田碧
 肌水の霧を浴びればつくづくとメガネの縁の生温き夜

ほきいぬ
 水際の鴨かもしれない鳥たちが僕らのはしゃぐ声聞く片野

佐田やよい
 水筒に氷ばかりが残されて夏の終わりをひとりで歩く

髭彦
 フクシマを水に流せぬ過去にせむ胸底深く刻みきざみて

萱野芙蓉
 肯いてそしてわたしは嘘をつく桜桃あまく熟れよ水無月


(敬称略)
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027:水(理阿弥)








淡水魚、かん水魚などの区別なき甥のながぐつ雨に泳いで

鑑賞026「震」(TB 139まで)

」の秀歌たち。


はこべ
 朝やけに水面静かに震動し睡蓮のはな咲き初めるなり

氷吹郎女
 ふるふると震えて落ちる雨粒の最初になれる勇気があれば

豆田 麦
 武者震いだと言い張って目を閉じた君の唇容赦なく吸おう

伊倉ほたる
 やさしさとあわれみ分ける直線がうまく引けずに震えてしまう

萱野芙蓉
 不意に窓震へて気づく さう、風が吹いてゐたのだ部屋の外にも

中村成志
 亡霊のごとくおぼろに富士は浮き気怠く震う市役所の旗


(敬称略)


今回も特選は無しで。
140以降に期待。

026:震(理阿弥)








水面みなもにて羽震わせる蛾を深く沈める指に波動さみしい
カミソリーフ
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理阿弥(りあみ)



ツイッター: Assam_Occam


 歌歴:08年より。
 口語でも文語でも。

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