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鑑賞080「結婚」








結婚をしなかったきみ飲み干せず青春 サイダー壜の重さよ
  たえなかすず

「きみ」は青春を乗り越えられなかったのだろうか。
大人になることを、老いることを受け止められなかったのだろうか。
いや、飲み干せなかったのは、そんな「きみ」を見ていた
「わたし」の方なのか。

この歌、構造が面白く混沌としている。
飲み干せなかったサイダー、のように真っ直ぐつながず、
途中にス、と青春が挟み込まれている。
さらに「飲み干せぬ青春」としっかりかけるのではなく、
飲み干せず、青春、サイダー壜の…と続いている。

青春なのか、サイダーなのか。かかりがはっきりと分からない。
作文なら零点。でもだからこそ短詩として満点。
一字開けもとても効果的。
この崩しによって、重みをしっかりと感じているのが分かる。

乱暴な省略やお行儀悪さが、<詩>の強みになるということは、
もっともっと意識されて然るべきだと思う。
短歌は報告でも日記でもないんだから。
「ある事実を見て、それを三十一文字であらわせ」という
題を与えられ、百人が百人するような表現をして、
それでいいのか、満足なのか、ということは常々思う。
「それはあなたでなくても書けることじゃないか」と。
自戒を込めて。

素晴らしい歌をありがとう。



「結婚」の秀歌たち。


野州
 北方の町より届きし結婚の通知は歯痛堪えつつ読む

三沢左右
 綿帽子に散りてひとひら結婚を祝ふ雪花消なであれかし

南雲流水
 (あかとき)の冷たい水に手を浸す結婚歴のある薬指

音波
 短めに結婚しよう永遠は約束するにはまだ長すぎる

平野十南
 結婚っていわさきちひろの絵のような感触でした不意に触れたら


(敬称略)

鑑賞079「雑」

このへんは皆さん詠み急いでるのかな・・・
選のみ。


」の秀歌たち。


浅草大将
 玉敷の斎庭(ゆには)に踏めば雑ざつと石ぞ鳴るなる我を咎むるか

紫苑
 改札に君を送れば雑踏はたがひの(しやう)を捲いて流るる

小夜こなた
 雑然と死体が積まれていたと云う通りを抜ける八月の風

湯山昌樹
 雑巾で一脚一脚拭いてゆく 祭の前の静かな準備

酒井景二朗
 雜草の小さき花咲く野邊行けば鼻歌少し高くなるなり

南雲流水
 分け入っても分け入っても茫々と池袋西口の雑踏

空音
 不揃いなマンション群は夕刻に複雑な影町に広げる

奈良絵里子
 雑踏とよべば行き交うひとが皆のっぺらぼうになるんじゃないか

笹木真優子
 溺れてる 雑音混じりの留守録のあなたの声を消せないままに


(敬称略)

鑑賞078「卵」

選のみ。

」の秀歌たち。


梅田啓子
 あやめたきほどの愛憎しらぬ手にうすかわ破り卵を割れり

新井蜜
 春の野に降りるひばりの産む卵奪はむとしてひとり野をゆく

髭彦
 受精せし卵子を胎に強ひらるる暮らしもあらむフクシマの地に

揚巻
 排卵日すてたゆうひのまたたきを俯いて聴くちいさな音符

清次郎
 大盛りつゆだくだく卵と言う人の目つきはみんなどこか似ている

さくらこ
 暗闇でわたしに触れた人の眼に卵を孵す静けさがある


(敬称略)

鑑賞077「狂」

花や鳥に託して。




つらぬいた愛が狂気に変わるとき藪の椿の花がこぼれる
  紗都子

ああ花梨お前こんなに実を付けて何を怖がる狂いびとおまえ
  平野十南

何度目の冬か訃報の重なりて鳩時計の鳩しずかに狂う
  ひぐらしひなつ

「わたし」に狂気をみるより、「花」「鳥」にそれを見るほうが、
暗い説得力を持つように感ずるのは、人はもとより狂う生き物であり、
ことによっては既に狂っているのかもしれないと、不安を抱えながら
生きるのが人間の性だからであろう。
自然は、狂う/狂わないという価値の埒外にあり、
であればこそ人の狂気を正反射する鏡となり得る。

狂人には自らが狂っているか否かの判断はつかず、
狂う、という不安が浮かびくるのは、
正常と狂気の狭間にあるときだけである。
つまりは「わたしはくるっている」という命題は成立せず、
考えうるのは「わたしはくるっているのかもしれない」という予想だけだ。
人はそれを確かめようとするが、自分の心を観察することはできないので、
外部に論拠を求める。それが「自然」だ。
自然は嘘をつかない他者だからだ。

そうだろう。
桜の木の下には、死体が埋まっている。
埋めたのはもちろん、人の狂気である。



」の秀歌たち。


飯田彩乃
 わたつみの(くびき)を捨てて浜に立てば狂へる母とすれ違ひたり

中村成志
 狂える血、と刻んだのだ
 Cruelty.この語の寒さ
 憶えるために


酒井景二朗
 恨めしき身勝手者を忘れむと狂氣をラムに溶かす夜なり

萱野芙蓉
 酔狂な生き物でした、貧相なわたしの胸で眠りたがつて

星川郁乃
 狂詩曲ひとつ聞き終えあすからはふゆ、とちいさな鷽が囁く


(敬称略)

鑑賞076「ツリー」








どなたかがつめたく光るダイオードをつくったおかげでツリーがきれい
  夏実麦太朗


特許訴訟とその是非で、一躍有名になった青色LED。
背後にあるドロドロを思えば皮肉的な響きを感じるし、
また素直に現代的な美しさを詠んだ歌ともいえる一首であります。

[開発する人]と[享受する人]の距離が、
「どなた」「おかげ」といった丁寧な言葉づかいに表れています。
ひらがなの多用で、柔らかくあっさりと歌っている印象を与えると同時に、
淡々と事実を述べている風にも見える。
大げさに感動を盛り込まず、客観的に「ツリーがきれいだ」と詠むことで、
一首に多義的な深みが生まれています。

"今"をうたうぞ!とか世相を切るぞ!とか意気込まず、
こうしてさらりと「現代のわたしたちの歌」を詠むことができるんですね。
複雑なことこそ、シンプルに詠う。
私を含め多くの現代歌人が学ぶべきポイントではないでしょうか。



ツリー」の秀歌たち。


紫苑
 (いら)へせぬ問ひのルフラン目の裡にとばりを映せスモークツリー

三沢左右
 片付けもされず残ったクリスマスツリーに褪せてゆけ願い事

はこべ
 スカイツリー何ゆえ高みを目指すかや人類あくなき性にてかなし

行方祐美
 ツリークライミングの朝の天を思ひ出づジョンさんと戦ぎしははその上の

廣田
 桟橋のパームツリーに手を振りて雨を迎える真夏の翳り

穂ノ木芽央
 クリスマスツリーとなるべく百年を待ちつづけてゐる森のしづけさ

笹木真優子
 きみたちを大人にしてしまうためにツリーハウスの床を撃ち抜く

砺波 湊
 伸びかけのスカイツリーを見上げてた頃の手帳を読み返してる


(敬称略)

こつこつと。

新しい年の目覚めにおはよう。
細々とやってるブログですが、今年もよろしくお願いします。

題詠ブログ、2012版も会場が設営されましたね。
残り25題の鑑賞、二月までに終えられるかな?

 ◆

表現以前の事実に感動するならその表現者は恥ずべきだ
ということを塚本邦雄が言っていて、
それを肝に銘じて今年はやっていきたいと思います。まる。
カミソリーフ
題詠blogへの投稿、選歌、鑑賞。
お気軽にコメント下さい。
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理阿弥(りあみ)



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 歌歴:08年より。
 口語でも文語でも。

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