鑑賞072「汚」
「美」や「麗」などポジティブなベクトルを持つ文字は
詩に使われやすいですが、反対の価値を持つ文字群もまた、
詩作には適していると思われます。
しかしそれだけに今回は「汚」の持つ強い「詩」性に抗えず、
その引力を振りきれなかった印象。
あるいは、震災で汚染された国土を倫理的に憂うにとどまり、
歌として昇華されない作品が多かったのではないでしょうか。
選のみ。
「汚」の秀歌たち。
横雲
花の雨しとど濡らせる宵なれば朽ちたる花の汚きを摘む
みずき
騒音は薔薇の汚れか白きもの全て真白き冬の静寂
船坂圭之介
ひと厭ふ心はつねにわが裡に汚辱の夜といふ安住地
廣田
悪徳を知りそめし夏過ぎさりて生徒手帳の汚れを落とす
南葦太
Always I’m 14 till I die. 汚れてるのは土なんですか?
萱野芙蓉
星を見る百合の花粉に汚されて地上にゐるつてかういふことか
ひぐらしひなつ
人殺めしことは忘れよ夏草にシャツを汚して愛しあうとき
藤田美香
外れても良いのだけれど汚れても良いのだけれど あ、落ちましたよ
竹中 裕貴
汚くていいよと言われ青薔薇の背骨に指を這わしてしまう
星川郁乃
それもさほど意味なく囁かれたのだろう葡萄の汁に口を汚して
(敬称略)
詩に使われやすいですが、反対の価値を持つ文字群もまた、
詩作には適していると思われます。
しかしそれだけに今回は「汚」の持つ強い「詩」性に抗えず、
その引力を振りきれなかった印象。
あるいは、震災で汚染された国土を倫理的に憂うにとどまり、
歌として昇華されない作品が多かったのではないでしょうか。
選のみ。
「汚」の秀歌たち。
横雲
花の雨しとど濡らせる宵なれば朽ちたる花の汚きを摘む
みずき
騒音は薔薇の汚れか白きもの全て真白き冬の静寂
船坂圭之介
ひと厭ふ心はつねにわが裡に汚辱の夜といふ安住地
廣田
悪徳を知りそめし夏過ぎさりて生徒手帳の汚れを落とす
南葦太
Always I’m 14 till I die. 汚れてるのは土なんですか?
萱野芙蓉
星を見る百合の花粉に汚されて地上にゐるつてかういふことか
ひぐらしひなつ
人殺めしことは忘れよ夏草にシャツを汚して愛しあうとき
藤田美香
外れても良いのだけれど汚れても良いのだけれど あ、落ちましたよ
竹中 裕貴
汚くていいよと言われ青薔薇の背骨に指を這わしてしまう
星川郁乃
それもさほど意味なく囁かれたのだろう葡萄の汁に口を汚して
(敬称略)